吉祥寺の中道通りから2本目の路地を入った道沿いにアパレルショップ「APPLE HOUSE（アップルハウス）吉祥寺店」（武蔵野市吉祥寺本町2、TEL 0422-27-5250）が駅前の吉祥寺ダイヤ街から移転して、7月22日で3カ月がたった。

店内にディスプレーした「オータムブーケ」と店長の五十嵐千津子さん

　オリジナルカラーで染めた天然素材の生地を使って国内生産する洋服や雑貨を販売する同店の経営は、「アップルハウス」ブランドなどの商品企画・製造・販売を手がけ、関東を中心に直営店26店舗を展開する「あぶち」（中野区）。

　手作りのアクセサリー販売から会社を興した社長の高畑啓子（高は「はしごだか」）さんが、「ものづくりをするのにちょうどいい街」として吉祥寺を選び、1971（昭和46）年、吉祥寺の五日市街道沿いで創業した同店。「自社でパターンを作り、色なども全て自社で作りたい」という思いから、「シンプルで着心地がいい」国産の綿などの天然素材を使い、縫製を米沢の工場などに依頼して国内生産する「吉祥寺生まれのファッションメーカー」として52年目を迎えた。

　吉祥寺では「アトレ吉祥寺」の前身、「吉祥寺ロンロン」での営業を経て、2009（平成21）年からダイヤ街脇で営業を続けてきたが、「周りが飲食業に変わっていったことから移転を決めた」と店長でバイヤーを務める五十嵐千津子さんは話す。二度の出産を経験しながら仕事を続けてきた五十嵐さん。「住まいが近いので、吉祥寺店での勤務も長く、顔なじみのお客さまも多い。お客さまの年齢層は30～90代。エイジレスで、サイズ展開や自社で作り出したオリジナルカラーで染める色が豊富なので、40年来のファンもいる」とも。

　新店の店舗面積は33.81坪。壁面全体には高畑さんの出身校・静岡県立浜松西高校の先輩で、イラストレーター・絵本作家のスズキコウジさんがライブペインティングでウオールアートを描いた。普段の作品はカラフルな色使いだが、洋服の色が映えるようにモノクロにしたという。ディスプレーは季節ごとに発表するテーマで変える。今回は美しい彩りの花束をイメージした「オータムブーケ」。色はニューカラーのピンク色「花飾（はなかざり）」などを使う。

　店内には1年を5シーズンに分け、シーズンごとに発表する55型が並ぶ。オリジナルカラーも季節ごとに新色を発表。今秋は8色で渋皮（渋皮）、葡萄（ぶどう）酒（ワイン）など。染色は自社で調合した染料を用いて、手染めの工程を機械化した独自の設備を使い、乾かしを手作業で行うため、「同じ色は二度とない。デザインも。出合いは一期一会」だという。

　商品は、全てゴムの入れ替えが可能な定番パンツ数種類、縫製職人が一人になったというスカラップ（ホタテの貝殻を並べたような連続した半円の波状の縁取りデザイン）を施したブラウス、綿麻混紡のゆったりとした七分袖シャツ「ノマーフシャツ」（7色、1万7,600円）、綿100％で薄くて透けないフレアータックの「ネファスパンツ」（4色、1万4,300円）などをそろえる。

　新商品を伝えるA5版8ページの商品カタログ「Apple House」を1996（平成8）年4月から毎月発行。7月で173号となった。「さまざまな年代のモデルが着用しているのを見ることで、着こなし方を知って、自分にも着られることを実感してほしい」と五十嵐さん。カタログにはコーディネート例をイラストで示すページや小物や雑貨などの作り方を型紙入りで紹介する「トモコママのハンドメイドノート」、エッセー、4コマ漫画なども掲載する。「たかはたけいこ」のペンネームで作家の顔を持つ高さんはコラムを執筆。五十嵐さんはイラストを手がける。「紙のカタログを手に取って読むことは洋服を手に取って見ること通じるものがある。高畑さんの『読み物へこだわり』やものりの会社としての思いを込めて発行を続けていきたい」とほほ笑む。

　「創業から52年続いたのは、自分たちが作ったものを自分たちで売るという姿勢がぶれなかったから。国内生産100％あることに誇りと責任を持って、これからも母、娘、孫の3世代が着こなしを楽しめる商品を提供していきたい」と五十嵐さん。「今は9割が以前の店からのお客さまだが、移転して環境が良くなったのを機に若い方の来店も増やしたい。さらに50年続くよう、地元に愛され、天然素材とオリジナルカラーの良さを発信し続ける店でありたい」と意気込みを見せる。

　営業時間は9時30分～18時30分。「オータムブーケ」の開催 8月10日まで。