「映画を塗る仕事」展が11月17日から、「三鷹の森ジブリ美術館」(三鷹市下連雀1)で始まった。
最後のセル絵の具使用作品は1997年の「もののけ姫」。歴代最高の580色が使われた ©Museo d’Arte Ghibli ©Studio Ghibli
同館で通算17回目、前回の「食べるを描く。」展から1年半ぶりの新企画展示となる同展。
スタジオジブリのアニメーションの礎を築いた故・高畑勲監督、宮崎駿監督は「登場人物とその日常を丁寧に描き、実写とは違ったリアリティをもたせることで、観客の心に訴えることができる作品」を目指したという。両監督を支えた色彩設計の故・安田道世さんが手掛けたセル画などを多数並べながら、「色」によって何を表現したのかひもとく。
展示に先立ち行った内覧会に登壇した館長の安西香月さんは「2年半前に同館を大規模修繕した際、常設展示室に10年展示していたセル画を軽い気持ちで張り替えようと保管箱を開けてみたら、手の込んだものすごい枚数のセル画が出てきた」と振り返る。
「1枚ずつ描いていたのかと驚いた。『もののけ姫』以降使われなくなったセル画だが、セル画がどういうものかも合わせて紹介したいと考えた」と話す。
「時刻によって変わる色」を始め、「影の役割」、水や光、素材感の表現などに対する彩色のテクニックなどテーマごとにパネルを分け解説。展示パネルは37枚、紹介するセル画は196点に及ぶ。実際に使われた580色の絵の具瓶を並べたコーナーも設ける。
安西さんは「ジブリ作品は時間の流れのようなものを非常に細かく描写するものが多い。ほんのささいなシーンのためにも色が考えられている」と話し、「両監督は『画面に常に透明感を持っていたい』と考え、夜の暗さも画面を暗くすることなく色で表現しようと考え出した。ブラッシュアップしていく中で、情景の豊かさのようなものを作り上げていった」と話す。
ポスターには、3つの時間帯に塗り分けられたネコバスのセル画とともに、常設展示室の壁に描かれた絵を載せた。「同館オープンの際、『セルを塗っているのは自分たちの時代』との思いもあり、宮崎監督自身が原図を描き、美術監督の男鹿和雄さんが塗ってくださった。色を塗る仕上げの人たちは当時注目されていたなかったようで、写真を探したが無く、この絵を掲載した」と話す。
「限られた色数の中で、両監督が作り上げたいという気持ちにスタッフが頑張って応えている感じがセル画からは伝わってくる。色によって何が表現されたのか、感じ取ってもらえたら」と来場を呼び掛ける。
三鷹の森ジブリ美術館の入場は日時指定の予約制。チケットは全国のローソンで、毎月10日午前10時から、翌月入場分のチケットを販売する。展示期間は2019年11月までを予定する。