吉祥寺の中道通りから路地を入った場所で日本全国や世界各地の生産者から食品や菓子などを仕入れて小売りする「吉祥寺千恵蔵(ちえくら)さん」(武蔵野市吉祥寺本町2、TEL 050-3527-4447)が5月21日で13周年を迎えた。
前職でもバイヤーで商品開発や店舗誘致を行っていた店主の大泉寛恒さんは、店を始める前から、旅先で好きになったものは箱単位でしか売らないのに買って帰ってきていたという。「自分が好きで食べるものを伝えたい」との思いが高じて、「お客さまへお裾分けしたい」と地元・吉祥寺に販売する場所を作ったのが2010(平成22)年。「店名に込めた『千の蔵の恵みを扱う』ところから始めたが、今では2,200点を超え、二千蔵になってしまった」とほほ笑む。
オープン前の2月から店作りの構想に参加したスタッフの畑内(はたうち)こずえさんと共に「吉祥寺で穏やかに暮らす人のために商品を届け続けたい。ストーリーを持つ作リ手が途絶えないように助けたい。ささやかに商いができれば」と店を続けてきた。
店舗面積は27平方メートル。店内は「何が出てくるかわからないワンダーランドのよう」で、大泉さんが足を運び、自ら発掘して選んだ「楽しい、おいしい、体に優しい商品」が並ぶ。武蔵野市がお土産ブランド品として認定する「むさしのプレミアム」の第1回(2014年)に認定された小豆ぜんさい(300円)など、毎日入れ替わりで300点以上、ほぼ毎週新しい商品3~5点をそろえる。周年祭を5月28日~6月5日に行い、全国で同店だけで扱う越後魚沼「脂肪僅少コンビーフ」を100円引きで販売する。
小物雑貨類も含め300人以上の作り手(生産者)の商品を扱うが、オリジナル商品も販売。大泉さんが好む味にイタリアンシェフが仕上げたマスタードペッパードレッシング瓶入り200ミリリットル(748円、ペットボトル1リットル=1,980円)など。商品のパッケージや売り方、生産などを一人で全てこなす大泉さんは「古本屋で掘り出し物を探すような楽しみ方をしてもらえたら」と話す。
最近はコロナ禍でいろいろな価格高騰に苦戦する取引先に「売る場所を提供したい」とアウトレットにも力を入れ始めた。フランス産オーガニックレモネード(750ミリリットル、1,400円→980円)、イタリア産オーガニックジャム(260グラム、850円→598円)など。無くなり次第、販売終了。
「13年続けられたのは、常に6割を占める常連客が助けてくれたから」と大泉さん。「吉祥寺は人気の街でありながらも、個性豊かな個人店も多く、ほどよい距離感での近所付き合いが残っている。お客さまが店名を呼び捨てではなく、さん付けで話し、親しみを込めてお気に入りの店のことを大事にしている」とも。「自動会計やキャッシュレスが進む時代、顔を合わせての触れ合いを大事にしたい。通りから声が掛かれば、店員が気軽に外まで出て相手をする店を営んでいきたい」と話す。
営業時間は12時~18時30分。