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吉祥寺の「レモンキャブ」が20周年 高齢者の外出支える足として走る

吉祥寺を縦横無尽に走る福祉型軽自動車「レモンキャブ」の仕様 車いすのまま乗れる

吉祥寺を縦横無尽に走る福祉型軽自動車「レモンキャブ」の仕様 車いすのまま乗れる

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 吉祥寺の街を走る福祉型軽自動車「レモンキャブ」(武蔵野市吉祥寺北町1、TEL 0422-23-0701)が10月、モデル事業期間を経て本格的に運行を始めて20周年を迎えた。

 「1人で公共交通機関を利用することが困難な人」を病院や買い物先などに移送する外出支援サービスとして始まった同事業。米穀店の店主から「配達先で買い物を頼まれたり、近くまで乗せてほしいなどの依頼があったりする。手の空く時間を使って地域の役に立ちたい」との声をきっかけに、1999(平成11)年、「武蔵野市新たな移送サービス事業研究会」を立ち上げた。

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 約1年後、小回りの利く軽自動車を選び、車体の色を街中でひときわ目立つ黄色にしたことで、「大通りから細い路地までクルクルと走り回る小さな黄色い車両」とレモンのイメージを重ねて、名称を「レモンキャブ」としたサービスが誕生した。実施主体は武蔵野市健康福祉部高齢者支援課管理係で、車両の購入や登録手続きなどを行い、利用者の登録や運行管理などの実務を武蔵野市民社会福祉協議会に委託する。

 同係の花木賢太さんは「初めは見慣れぬ色の車両となじみのない公共サービスの出現に戸惑いがあったが、既存の交通機関と比較する中で少しずつ浸透してきた」と話す。

 レモンキャブの運転者は、個人商店主、会社員、子育て中の主婦など。会員制で配車の手配も行う「運行管理者」と「運行協力員」がいる。同協議会に書類を提出して面接などを受けた後、運行に支障がないと判断すれば登録となる。車両1台ごとに「運行管理者」は1人で、「運行協力員」数人と専属のチームを作って運行する。

 車両は9台。2000(平成11)年3月にモデル事業を始めたときは5台だったが、10月には2台増車。2002年と2004年にも1台ずつ増車した。車いすでそのまま乗り込める「スロープ型」が8台で、そのうちの3台は大きめの電動車いすにも対応する。後部座席がリフトになっており、ノンステップで乗車できる「シートリフト型」も1台ある。

 利用対象は市内在住で、おおむね65歳以上の「公共交通機関のバスやタクシーなどを1人で利用することが困難な人」と障がい者手帳を所持している人となる。会員制のため、初回は同協議会のレモンキャブ担当(TEL 0422-23-0701)に電話で登録を申し込む。登録時には面談があり、利用対象となるかや、レモンキャブを利用することで本人の要求が満たされるかどうかを確認。利用条件に納得すれば登録となる。

 利用申し込みは「完全予約制」。利用する2日前まで「運行管理者」に直接、電話で予約する。顔なじみになった運行協力員に送迎を依頼することもできるので、「運行協力員が利用者の身体の状態や認知症などの症状などを把握してくれることは、利用者だけでなく家族の安心にもつながっている」と花木さん。

 運行範囲は、武蔵野市、三鷹市、小金井市、西東京市、杉並区、練馬区で、発着地のいずれかが武蔵野市であることが条件。年会費は1,000円。出発地から目的地(1カ所)までの利用1回につき30分ごとに800円。当日キャンセル手数料は400円。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、病院、福祉施設等への通院、通所(リハビリ施設など)への利用に限定し、予約受け付けは1カ月先までとする特例で運行を継続。非接触型体温計での検温、乗車時のマスク着用、車両備え付けのアルコールでの手指消毒を徹底している。

 「10年前の2010(平成22)年、東日本大震災が発生して東京でも混乱が続く中、通院などが必要な人の足として運行協力員の皆さんの熱意で休むことなく運行を続けた。20年目を迎える今年は新型コロナウイルス感染症がまん延。今回は運行休止を真剣に検討したが、やはり運行協力員の皆さんの熱意に支えられ、特例運行を続けている。大規模な災害や感染症などを通して、地域交通の一翼を担う仕組みとして成長を遂げてきた」と花木さん。「レモンキャブのような移送サービスへの需要は、特に都市部では減ることはない。運行協力員の登録にも新しい人が参加してもらって息の長い事業に育てていきたい」と、これからの抱負を話す。

 運行時間は原則8時~18時。日曜・祝日と年末年始は運休。