吉祥寺の末広通り沿いにあるビル3階に、秘境で作った中国茶を専門に扱う「青蛾茶房(せいがさぼう)」(武蔵野市吉祥寺南町2、TEL 090-3131-4331)がオープンして3年が過ぎた。店名の「青蛾」は中国で「美人」を意味する。
店主の鈴木朋博さんが中国で仕事をしていた時、中国茶に魅せられ、買い集めてきたお茶を「皆さんに味わってほしい」と提供することから始めた同店。師匠は「茶の原産地」を研究テーマにする松下智さん。「20年以上前、雲南省の古い茶樹原生種の情報を調べていたら、お会いする縁に恵まれ」、雲南省、ベトナム、ラオスへの調査に同行したという。
鈴木さんは「安全なお茶を飲みたい」との思いが高じて、自店で生産プロセスの品質監理を決意。「中国茶のソムリエ」といわれる中国政府認定の高級評茶師、さらにお茶いれの専門家としての高級茶藝師の資格を取得し、樹齢千年を超える古木を訪ね歩いた経験も生かして、福建省永春で無農薬栽培した茶葉や花を輸入する流れを確立した。
有機農作物の国際品質基準を日本、アメリカ、ドイツなどでクリアした「雲南白茶」など各茶葉は、20グラム単位で販売。超高級茶は10グラムから販売。種類は武夷岩茶(ぶいがんちゃ)、鳳凰単叢(ほうおうたんそう)、白茶(はくちゃ)、黒茶(こくちゃ)類など。価格は1,500円からで、全て試飲できる。年間に数回、10~20種類を組み合わせたセットも販売。10月末には鉄観音セット(春茶・秋茶5,000円予定)を販売する。
店舗面積は約30平方メートル。テープル6卓と椅子14脚、お茶をいれるスペースを備える。「中国でも入手困難な秘境の茶葉を吉祥寺で多くのお客さんに飲んでほしい」と評茶師が入れる喫茶メニュー(お菓子付き1,000円)を用意。客が選んだお茶を茶荷(ちゃか)に入れて見せる賞茶の後、ふた蓋付き茶碗の蓋碗(がいわん)でいれたお茶をピッチャーの茶海(ちゃかい)に移し、個別の茶杯(ちゃはい)に注いでサービスする。2人が別々のお茶を注文すると、相手のお茶がシェアできるシステムで、「同時に来店するお客さまが5人なら、5種類を味わうことができる」と鈴木さん。提供は180種類の中から「お客さまの希望に合わせてお薦めを選ぶ」。
コロナ禍で延期していた中国茶教室を9月に始めた。毎月開催で、中国茶の正しい知識といれ方、歴史と主な種類などを学び、参加者同士がお互いにお茶をいれる実技もある。講師は、30年近く前に中国紅茶(雲南紅茶)に出合って衝撃を受け、お茶についてもっと詳しく知りたいと2016(平成28)年11月、浙江省杭州市で受験して中国政府認定の高級評茶師の資格を取得した河村圭位子さん。オープンからの常連客で、テイスティング要員として仕入れにも同行する。「種類が多い中国茶には味や香りの厚みや奥深さがあり、樹齢千年以上の茶樹には圧倒的なパワーがある。煎を重ねるごとに味や香りが変化していく過程をゆっくり楽しみ、気楽に飲んでほしい」と河村さん。初心者コース(3,500円)など。開催日はインスタグラムで知らせる。
「茶芸師や中国茶サロンの先生などの専門家の常連がほとんどだが、初心者も歓迎。人が人を呼び、お茶をシェアしたり、珍しいお茶を教えてもらったりする楽しさがある」と鈴木さん。「日本にはあまり知られていない身体に良くておいしい中国茶がたくさんある。秘境の店として、飲んだことのないお茶に出合える楽しみを提供していきたい。目利きが選んだお墨付きを、ぜひ味わってほしい」と来店を呼び掛ける。
営業時間は12時~19時。火曜、水曜定休。