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吉祥寺の喫茶店「アンデルセン」 昭和から令和への流れを見つめ半世紀

黄色いオープンカー、ホンダ「BEAT(ビート)」が目印の「喫茶アンデルセン」外観

黄色いオープンカー、ホンダ「BEAT(ビート)」が目印の「喫茶アンデルセン」外観

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 吉祥寺の武蔵野市立第一小学校(吉祥寺本町4)近くの道沿いで粗びきネルドリップ方式のコーヒーを提供する「喫茶アンデルセン」(武蔵野市吉祥寺本町4、TEL 0422-22-0263)が11月、オープンから半世紀を迎えた。

入り口に飾られた人魚姫、アヒル、コオロギをモチーフにした看板

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 1948(昭和23)年生まれで、来年75歳になる本郷善則さんが店主を務める同店。岡山市内で5人兄弟の末っ子として育ち、1966(昭和41)年に上京。兄たちも居候した吉祥寺の祖母の家で大学時代を過ごした。店を開いたのは、卒業2年後の1972(昭和47)年11月。祖母の家の隣が空いていたので「話しは逆のようだが、この場所に家を建てることが先だった。その後、生計を立てるために、母の友人が喫茶店を営んでいて、自分もコーヒー好きだったことから、24歳で喫茶店のオープンを決めた」と話す。

 店名は童話作家「ハンス・クリスチャン・アンデルセン」から取った。入り口には、人魚姫、アヒル、コオロギをモチーフにした看板がある。

 「当時は近くに成蹊大学があることを知らなかったが、学生が立ち寄る場所としてにぎわった」と本郷さん。故安倍晋三元首相が出身校・成蹊大学の集会で、「学生時代にはアンデルセンでコーヒーを飲んだ」と話したことを後から知ったというエピソードも。昔は平屋建てで、後ろが駐車場だったため、車での来店客が多かったという。

 昭和から平成へと時代が移りゆく中で、「大変なこともあったが、過ぎたことは忘れた」とほほ笑む本郷さん。令和になり、「コロナ禍で客足は減ったが、今でも久しぶりに来てくれる常連がうれしい」とも。

 車好きが高じて1991(平成3)年に購入したマニュアルで軽自動車のホンダ「BEAT(ビート)660」は、ツーシーターの黄色いオープンカーで店の目印になっている。

 コーヒー豆はブラジル産で、オープン時から変わらず「カフェーパウリスタ」を経営する業務用コーヒー卸の「日東珈琲(コーヒー)」(以上、中央区)から仕入れる。「吉祥寺では2020年閉店の『珈琲の店近江屋』や2022年3月閉館の吉祥寺第一ホテルが使っていた」という。

 メニューは、「あっさりコクのある飲み応え」があるという深いりと「少し苦みがある」浅いりを8対2でブレンドしたコーヒー(400円)、アメリカン(450円)、 カフェ・オーレ (500円)、紅茶(ミルク・レモン400円)、アイスコーヒー(450円)、アイスオーレ(550円)、アイスティー(500円)など。

 50年がたち、年齢を重ねたが「店に出て体を動かすことが生活のリズムを整えることになる。お客さまと会うことが続けるモチベーション」と本郷さん。30年前に店を建て直した際、自分が常にいる場所なので、くつろげる空間にしたいと内装を木材で仕上げた。テープル席とカウンターを備える店の中は雑然としているが、「平和で静かな時間を過ごしたい。駅前の喧噪(けんそう)を離れ、今もゆったりとした時間が流れているこの場所で、この先ものんびりマイペースで続けていけたら」と穏やかに話す。

営業時間は9時~18時。日曜・祝日定休。

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