5スクリーンに計300席を備えたミニシアター「アップリンク吉祥寺」が12月14日、吉祥寺パルコ(武蔵野市吉祥寺本町1)の地下2階にオープンした。12日・13日にはグランドオープンに先駆け関係者、クラウドファンド出資者に向けたイベントが行われ、トークイベントには映画館作りに関わった関係者、写真家、映画監督らが登壇した。
壁紙、椅子、照明デザインなど、全て内装が異なるデザインコンセプトとなる、最小29席から最大98席までのシアターを取り囲むように、各所に200枚以上置けるチラシスペース、ポスターコーナー、ギャラリースペースなどを設けた。
ゲストの一人、メインのギャラリーで写真を展示する写真家のハービー山口さんは「寺山修二主宰の演劇グループ『天井桟敷』を通じ、(社長の)浅井隆さんとは長い付き合い」と言い、「永遠に響く表現を世界中から探して届けてくれる場所」と話した。「写真展では写真に、各被写体が自分の意思で初めて見に行った映画のタイトルを添えている。どれもすてきな笑顔が撮れた」とも。
店内にはほかにマイアミのアーティスト、ラ・マノ・フリアさんの作品、軽井沢の森を撮り続ける田淵三菜さんの写真、アーティスト河村康介さんのコラージュ作品なども展示する。浅井さんは「買い物のついでに地下に降りてぐるっと回るだけでもさまざまな刺激に触れられる。気に入ったシアターの作品を選んだり、チラシを見て選んだり、若い人にも映画館で映画を見てほしい」と話す。
続いて4人の映画監督が登壇し、オープンへの思いを語った。矢崎仁司監督(「無伴奏」)は「夢がある。今、社会で必要なのは暗闇。いろいろな履歴を持った人が一堂に集まる映画館という暗闇には、映画を通しさまざまな感情を投影できる」と話した。
山下敦弘監督(「ハード・コア」)も「場所としての迫力があった。ここで早く映画が観たい」と言い、富田克也監督(「バンコクナイツ」)も「地方の劇場が無くなっていく中、オープンは最高」と話した。
大九明子監督(「勝手にふるえてろ」)は、「映画というより映画館が好き。若い頃、映画館は大人の社交場だと思っていたし、映画を見る日は特別な日だと思っていた。5つもシアターができて感謝」と祝った。
浅井さんは「世界にはもっともっと楽しい映画があり、映画ならその多様な価値観、違った文化に1時間で触れられる。カルチャー的なものを発信できる場所として、今後は映画上映だけでなくイベントや、街の人と協力してお祭り的なことなどやっていけたら」と意気込みを見せる。