三鷹の山本有三記念館(三鷹市下連雀2、TEL 0422-42-6233)で現在、リニューアルオープン記念の企画展「山本有三、作家の遍歴」が開催されている。
同展は小説家・山本有三が明治・大正・昭和を、劇作家、小説家、参議院議員としてどのように生きたかに注目。「遍歴」として足跡を紹介するもの。主催は公益財団法人三鷹市スポーツと文化財団と三鷹市。
学芸員の三浦穂高さんは「山本有三は劇作家から出発し、新聞小説で国民的作品を発表した。戦後は文化人として社会的な役割を果たそうとし、最後は未完のまま絶筆となった小説『濁流』の執筆にたどり着くまでを『遍歴』としてまとめて伝えたかった」と企画を手掛けた理由を話す。
展示は2階で数々の自筆原稿や初版本を並べた3部構成となる。旧洋室書斎の展示室Cには「戯曲作家、有三」と題して、遍歴の出発点となる戯曲を書き始める経緯を説明。1920(大正9)年に発表した戯曲「生命の冠」などを展示する。
旧書庫の展示室Dには「新聞小説作家として」と題して劇作家ゆえに分かりやすい文章が書けることを見込まれ菊池寛の勧めで1926(大正15)年に書き始めた小説「路傍の石」、「女の一生」、「真実一路」などを紹介。創作活動以外で取り組んだ山本有三編集の国語教科書も展示する。
妻と次女・三女の部屋だった展示室Fには、「晩年作『濁流へ』」として参議院議員の任期を1953(昭和28)年に終えた後1973(昭和48)年に小説「濁流 雑談 近衛文麿」を毎日新聞に連載するまでの背景などを解説する。
三浦さんは「『君たちはどう生きるか(吉野源三郎著)』は山本有三が編さんした子ども向けの教養書シリーズ『少国民文庫』」」(全16巻)に収録された本。山本有三の小説には普遍性があり、今読んでも共感できる。企画展を見ることで、本を手に取って読む人を増やしたい」と来館を呼び掛ける。
同館は山本有三が1936(昭和11)年から1946(昭和21)まで家族と共に暮らした家。玉川上水沿いに立つ2階建て洋風建築で、マントルピース(暖炉)が3つある。三鷹市文化財指定で、今回のリニューアル工事では応接間に壁を追加するなど耐震を強化した。受け付けでは「路傍の石」(1,050円)、「真実一路」(767円)、「心に太陽を持て」(594円ブラウザーゲーム文豪とアルケミスト限定プレミアムカバー)などの文庫本を販売する。
開館時間は9時30分~17時。月曜休館(祝日の場合開館、翌日・翌々日休館)。入館料300円。2018年9月2日まで。