ハモニカ横丁の特徴や、戦後のヤミ市を起源とする横丁の形成過程をまとめた冊子「吉祥寺『ハモニカ横丁』の記憶」が5月初旬、発売された。
著者は、法政大学工学部在籍時からハモニカ横丁の調査研究を続けている井上健一郎さん。井上さんは、大学2年の時にハモニカ横丁を訪ねた折、道幅が2メートルもない通路に沿ってレトロとモダンな店が入り混じる様子に「のぞき見したくなるような」印象を受け、毎日のように足を運んでは横丁の「日常」に触れながら、大学との往復を繰り返して「横丁研究」を重ねた。
大学卒業を迎え、論文としてまとめたレポートが横丁の店主らから高い評価をうけたことを機に、研究機関での講演や商店街が発行するマップへのコラム寄稿、建築専門誌への寄稿などを行うように。昨年は、長野県諏訪市で行われた「路地からのまちづくり」をテーマにした会議「全国路地サミット」で調査報告を行うなど、井上さんの研究活動に全国から関心が集まっている。
現在、故郷の新潟で会社員として働きながら、週末には上京して「横丁研究」を続けている井上さんは、ゴールデンウィーク休暇に横丁との再会を喜んだ。オープンしたばかりという若手店主と話し込んだり、商店街の長老や街の関係者とも熱く討議。「今回、ハモニカ横丁からの『卒業論文』という気持ちで調査報告書を刊行したつもりが、やはり現場に来てしまうとやめられない」という井上さんの「研究熱」に、「寝ても覚めてもハーモニカ」を自称する商店会会長の水野秀吉さんでさえ舌を巻いていた。
販売はハモニカ横丁内の干物店「なぎさや」と井上さん自身のホームページで行う。A4版38ページで、一部500円。