QNS Services株式会社(以下、QNS Services)は、耐量子暗号通信に関わるソリューションプロバイダーとして、株式会社東芝(以下、東芝)と連携し、情報理論的安全性と高可用性を両立する冗長型量子安全通信の概念実証(PoC)に成功しました。
本実証では、企業ネットワークにおけるハブ拠点間を想定した2拠点構成を構築しました。主回線には東芝製QKD(Quantum Key Distribution: 量子鍵配送)システム、副回線にはQuantum Bridge製SDS(Symmetric-Key Distribution System)上で動作する鍵交換方式DSKE(Distributed Symmetric Key Establishment)を採用しています。SDSは、PQCやDSKEを実装し、QKD(量子鍵配送)とも連携できるクリプトアジリティを備えた対称鍵交換基盤です。
PoCでは、災害発生時の回線断絶に対するディザスターリカバリを想定し、これらをエンタープライズルータ(SAE)で構築したIPsec VPN環境に適用し、SKIP APIを介して連動させることで、鍵管理の連携を検証しました。その結果、主回線に障害が発生した場合でも、副回線へ自動的に切り替わり、進行中のIPsec VPN通信セッションを継続できることを確認しました。これにより、異なる耐量子鍵配送方式と異なる経路を組み合わせた冗長構成においても、情報理論的安全性を維持したまま無停止での通信が可能であることを実証しました。
量子コンピュータ技術の進展に伴い、企業や社会インフラには、より高い安全性と可用性が求められています。QNS Servicesは今回のPoCを通じて、量子安全通信技術を実運用に近いネットワークへ統合するためのインテグレーション技術の有効性を確認しました。
本PoCにおいて東芝は、QKDシステムに関する技術協力を行っており、ネットワーク全体の設計や他方式に関する評価・提供は各社の役割に基づいて実施されています。

PoC構成図
東芝製QKDシステム
■ 本実証試験のポイント
- 鍵交換方式の冗長構成の切替実証
主回線のQKDと副回線のDSKEを組み合わせ、切替時切り戻し時にも一貫して暗号通信継続が可能であることを実証しました。
- 異方式・異経路によるレジリエンスを確認
専用線を用いるQKDと、インターネット回線を利用可能なDSKEを組み合わせることで、専用線障害時にも安全な通信継続が可能であることを実証しました。
- 大容量データ転送中のフェイルオーバーを確認
30GBのデータ転送中に意図的な回線遮断を行い、通信セッションを維持したまま転送を完了できることを確認しました。
■ 東芝 ICTソリューション事業部 QKD事業推進室 部長 武田禎晴氏は以下のように述べています。
「QNS Services様による今回のPoCは、企業ネットワークにおいて、災害時であっても重要拠点間通信の可用性を高めるための有効性を示したものと認識しています。情報理論的安全性を有する鍵配送技術を組み合わせた冗長構成を実環境に近い形で検証された点に意義があると考えます。東芝は、関連技術の発展と、パートナーとの社会実装に向けた取り組みを進めています。」
■ 今後の展望
QNS Servicesは、本実証で得られた知見を基に、2026年の提供開始を目指し、金融、公共、医療など高い安全性と事業継続性が求められる分野に向けた冗長型量子安全通信ソリューションを展開してまいります。今後は、国内拠点間接続に加え、離島や海外拠点を含む多様なネットワーク環境においても、情報理論的安全性を維持した通信基盤の実装を支援してまいります。
■ 各社概要
- QNS Services株式会社:耐量子暗号通信分野のソリューションプロバイダー。Quantum Bridge Technologies, Inc.の日本総代理店として、耐量子セキュリティソリューションの導入支援、システムインテグレーション、関連サービスを提供。また、グループ会社が開発する製品の販売および導入サービスも提供。
- 株式会社東芝:東芝は、1999年から量子鍵配送(QKD)の研究開発に取り組み、鍵配送速度や通信距離について数多くの成果を創出してきました。量子セキュアコミュニケーション分野においては、先進技術の研究開発に加え、パートナーとの実証やPoCを重ねながら、社会実装を見据えた実用化と展開を進めています。