吉祥寺の五日市街道沿いでオーダーメードのジュエリーを女性職人が製作・販売するアトリエ「Blue Dove Jewelry studio (ブルーダブジュエリースタジオ)」(武蔵野市吉祥寺本町4、TEL 0422-27-5293)が、限定で結婚指輪の製作を始めて1年が過ぎた。
「既製パーツの組み合わせでなく、すべてを自分の力で生み出せるところが魅力」と話すジュエリー職人の岡崎真梨子さん
ジュエリー販売とジュエリースクール「DOVE Academy of Jewelry Arts」の運営を手掛けるNAO(吉祥寺本町4)が経営する同アトリエ。社長でスクールの学長を務め、自らも「コンテンポラリージュエリーアーティスト」の山田直広さんが、2019年7月、「スクールで技術を学んだ女性が『ジュエリー職人(Goldsmith=ゴールドスミス)』として働く場所を提供したい」とスタジオをオープン。ショップの営業を2020年1月に始めた。
山田さんは20代、渋谷のジュエリー専門学校で学び、講師を務める中、師匠の父が刀「鐔(つば)」などの彫金「刀装具」を製作していたこともあり、1998(平成10)年、ジュエリーデザイナーやアーティストを育成する少人数制の総合学校「DOVE Academy of Jewelry Art」を開講。32歳で西荻窪にジュエリー原型製作とスクールを併設する工房をオープン。ジュエリー作りを習いたい人が増えたため、40代でスクール用の広い場所を求めて吉祥寺に移転した。
西荻時代にサンフランシスコのアカデミー「REVERE Academy of Jewelry Arts」 学長のリビアさんと知り合った縁で、2002(平成14)年から2016(平成28)年まで日本の彫金をアメリカで教えた。1回の滞在は3カ月で、毎回工房を見て回ったが、男性優位の現場で女性職人が客の話しを聞いてデザインし、彫金して製作する姿に驚いた。その経験から、「日本でも女性が安定収入を得る職場を作ろう」と決意したという。
工房と相談スペースを設けたショップの内部はスキップフロアで、店舗面積は40平方メートル。工具や什器を備えた製作ブースを持つスクールは地下1階で35平方メートル。アトリエは山田さんがアメリカで見たジュエリー工房のスタイルで運営する。リングのパターンサンプルは常時100種類以上を用意。4年間学び、3年経験を積んだ岡崎真梨子さんなど職人は女性のみ。「一組一組のクオリティーを保ち、女性ならではの感性で世界に一つのデザインを作り出す」リングはペアで、結婚指輪は平均価格30万円前後、婚約指輪は40万円前後で販売する。
6月からアメリカを拠点にするジュエリー作家Natsumさんの商品取り扱いを始めた。2022年1月から1年間、スウェーデンで2年スクールに通い、1年ジュエリーの仕事をしたゴールドスミスのジェシカさんを受け入れる。スクールの生徒として「日本伝統彫金コース」で伝統技術を学びながら、ショップでの製作、接客に携わる。
「20年たつ間に、アメリカ全体のジュエリー職人の比率は女性優位となったが、日本はまだ昔ながらの男性優位な世界。女性が活躍する文化を根付かせたい」と山田さん。「欧米では一つの街に一つのジュエリーショップがあり、結婚指輪はオリジナルでオーダーするのが一般的。工房で職人の作業が見えることが信頼につながる。日本でも量産するのでなく、お客さまの思いに寄り添って、作ることを職人と共有しながら仕立ていくショップにしていきたい。地域に根付き、多様化に応えられる女性職人たちを育てるジュエリー工房になれたら」と意気込む。
営業時間は10時~19時。火曜、・水曜定休。