カラーメゾチントという銅版画技法を開拓し、多くの作品を創作した浜口陽三の展示「ぶどうとレモン」が現在、「武蔵野市立吉祥寺美術館」(武蔵野市吉祥寺本町1、TEL 0422-22-0385)で開催されている。
浜口(1909-2000)は和歌山県に生まれ、東京美術学校(現東京芸術大学)彫刻科を中退後パリに移住。国内外でさまざまな賞を受賞するなど活躍した。同館内にある「浜口陽三記念室」では、初期のモノクロームからカラーメゾチントに至る銅版画作品やその原板など、年に3回テーマを変えて公開している。
学芸員の布施道さんは「今回、浜口がメゾチントの手法を用い始めた1950年代初めから主要なモチーフの一つになっていったブドウと、同じく初期作品から多用されているレモンに焦点を当てた。観察された果物が浜口の目を通してどのように描かれているのか見てもらえたら」と話す。
関連イベントとして昨年、子ども向けワークショップ「『おいしいぶどう すっぱいレモン』 よーくみてから、かいてみよう!」を行った。パッケージデザインや広告を手掛けるほか、絵本作家としても活躍する「彦坂木版工房」の彦坂有紀さん、もりといずみさんを講師に迎え、同館のユーチューブチャンネルで動画配信し、絵を募集した。
「木版の手法で描く食べ物がおいしそうでどうしたらそのように描けるのか、色や形をよく観察するなど基本的なことを子どもたちに伝えてもらえたらと、たっての願いで2人に講師を引き受けていただいた。10月に動画配信後、約1カ月の応募期間中に届いた218点の作品からは、しっかりと観察して楽しんで描いてくれた様子が伝わってきた。作品は講師のコメント付きで返却する」と布施さん。
同館で展示した全応募作品は、「武蔵野プレイス」(1月12日~2月2日)、「吉祥寺図書館」(2月8日~28日)で巡回展示を行う。布施さんは「当館では講師が描いた絵本原画や動画ワークショップ用に作成してくださった作品と版木を展示中。図書館では2人の絵本特集を合わせて行う。3館でコラボ企画を本格的に進めるのは初めてだったので、それぞれの館らしい特徴ある展示ができればと打ち合わせを重ねた。『武蔵野プレイス』は司書の方々が独自のアイデアで、児童図書のフロアらしい温かみのある空間に仕上げてくださった」と振り返る。
「コロナ禍にあって、どんな状況でも参加した子どもたちや家族が楽しめるような新しい形のワークショップを目指した。実際に見に行くほか、『彦坂木版工房』のウェブでも展示をしているので自宅でも楽しんでもらえたら」と呼び掛ける。
開催時間は10時~19時30分。入館料(今回の常設展)は100円、小学生以下・65歳以上・障がい者無料。2月28日まで(1月27日・2月17日・24日休館)。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、来館時にはマスク着用や検温、手首の消毒、連絡先記入を求める。