「人を引き寄せる都市の本質とは何なのか」について語り合う「吉祥寺フォーラム2018」が12月21日、「吉祥寺第一ホテル」(武蔵野市吉祥寺本町2)8階天平の間で開催された。
主催は、設立50周年を迎えた武蔵野市開発公社。1968(昭和43)年の設立以来、吉祥寺を中心に街の発展や活性化など、まちづくりに取り組んできた。人々の働き方や生活スタイルが変化し続ける中、この先の50年を見据え同フォーラムを企画した。定員を超える応募があり約300人が参加した。
第1部の対談には建築家の隈研吾さんと、首都大学東京教授で都市の計画デザイン、そのための市民参加手法などについて研究する饗庭伸さんが登場し、対談した。
隈さんは「都市は失敗の集積にほかならず、失敗を重ねた都市ほど偉大な都市だ」という自身の考えについて、「失敗がある種のノイズを作っていて、そうした緩さのようなものがあった方が好かれる建築、街になるのでは」と話した。「結果的に小さく分割され、集合体となった吉祥寺のハーモニカ横丁のような場所も面白い」とも。
饗庭さんは「都市とは、豊かな生活をしたいという目的のための手段の集合体」と説き、「都市では人々がそれぞれ持っている資源の『交換』や『分配』が行われる。すなわち『マーケット』が都市の始まり」と話した。
隈さんは「人間は街を住みこなすエネルギーがある。もしかしたらある程度放っておいた方が良いかもしれないし、何か核になるものが必要なのかもしれない」と言い、饗庭さんも「人は思いもよらないような住み方、使い方をする。街を歩きながらそんな意外なものに出合えるというのは楽しいし貴重なのでは」と締めくくった。
第2部は、饗庭さんのほか、都市のランキング「Sensuous City『官能都市』」を発表した島原万丈さん、「マーケットでまちを変える 人が集まる公共空間のつくり方」の著書もある建築家、鈴木美央さんがパネルディスカッションを行った。
島原さんは「この街なんかいいよね?」という感覚を分析すべく、街での体験・経験や、街を歩いたり眺めたり身体的に感じた事柄から街のランキングを製作。134のエリアで文京区、大阪市北区に続いて、3位に武蔵野市がランクインしたと解説。
「都市が都市であり続けるためには、人の営みが新陳代謝を繰り返しながら続いていくのが良いのでは。吉祥寺は歩いても店が途切れないと感じた。小さい主体(店)などが小さなチャレンジをいつでもできる場所であれれば」と島原さん。
鈴木さんはマーケットの効果について解説し、「人が集う場ができれば、交流や体験が生まれ、街を好きになり、やがて街の担い手にもなる。マーケットはこれからの街を変える」と話し、「吉祥寺はさまざまなニーズを満たしているが、過密している感もある。もう少し余白が生まれれば。どう個を束ね、どうその集合体を設計、デザインするかが重要」と話した。