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荻窪でトークイベント「フェルメールナイト」-「真珠の耳飾りの少女」を読み解く

6次元「フェルメールナイト」会場の様子

6次元「フェルメールナイト」会場の様子

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 荻窪の古本を扱うカフェ・ギャラリー「6次元」(杉並区上荻1、TEL 03-3393-3539)で6月22日、フェルメールの名作「真珠の耳飾りの少女」を読み解くトークイベント「フェルメールナイト」が開催された。

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 「フェルメール巡礼」(とんぼの本)の刊行を記念して行われた同イベント。同書の著者でライターの前橋重二さん、美術ブログ「青い日記帳」主宰の中村剛士さんをゲストに迎え、満員の観客およそ35人を前に、約2時間30分におよぶディープなフェルメールトークが繰り広げられた。

 同書は、オランダ・マウリッツハイス美術館を出発点に、世界全16個の美術館を訪ね、「デルフト眺望」「真珠の耳飾りの少女」などフェルメールの作品全37点の全てを軽妙な語り口で紹介。画中にちりばめられた謎に迫るとともに、フェルメール家の間取り図紹介や「フェルメールはカメラを使っていたのか?」についてのコラムなど、多彩な角度からフェルメールの全容をひもとく一冊となっている。

 当日は、開場と同時に当時のオランダで飲まれていたとされる、赤ワインにスパイスを入れたドリンクと「牛乳を注ぐ女」に登場するパンプティングを再現したものが来場者に配られ、トークショーがスタート。

 トークでは、同書にも登場する「手紙」についての考察やカメラの使用について詳しく紹介したほか、フェルメールの絵のキーともなる「青色」や「黄色」についての話などを展開。途中、肖像画が1枚も残されていないとされるフェルメールの自画像らしきものを「古本屋で見つけた本の中に発見した」という中村さんの話が披露されると、会場には笑いが起きる場面も。

 中村さんは、今月から東京都美術館(台東区)で始まる「マウリッツハイス美術館展公式ガイドブック」(朝日新聞社出版)の編集・執筆も手掛けている。同展での公開が話題となっている「真珠の耳飾りの少女」についても、2人のさまざまな見解が披露された。特に「視線」に焦点が当てられ、来場者一人一人から意見を聞くなどし、眉毛が描かれていない理由、右目と左目の目線の方向についてや少女は何歳なのかなどの話が交わされた。

 「今よりも『見る』ことが大事だった時代で、『見る』ことに理解するとか把握するという意味があったのだと思う。私たちはもしかしたらその絵や対象物を自分のものにしたくて『見て』いるのかもしれない」と中村さん。

 来場者からの質問タイムでフェルメールの魅力について聞かれると、前橋さんは「どこまでいっても切りがないところ。なぜ視線が合わないのかに始まり、どんどん深みにはまっていく。自分の生涯にわたって追求していける面白さにあると思う」と話した。中村さんは「これだけ著名な画家では珍しい」として、全37作品という数に限りがある点を魅力として挙げた。

 イベント終了後、前橋さんに感想を聞くと「皆さん熱心に話を聞いていただき、フェルメールという画家はやっぱりすごいと思った。こんなに興味を引くのはフェルメールならではだろう」。中村さんは「前橋さんは憧れの人でフェルメールをきっかけに今回ご一緒できてうれしい。(自分の話が)前橋さんの学術的な話の箸休めになってよかったかなと思う」と笑った。

 今後、同店では「活版ナイト」や谷川俊太郎さんらによる「物語詩の夕べ」、好評企画の「金継ぎナイト」(不定期開催予定)などのイベントを開催する。詳細については同店ホームページで確認できる。

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