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吉祥寺のジュエリーアトリエにスウェーデン人の女性職人 学びながら接客も

オーダーメードの指輪を「Blue Dove Jewelry studio」で製作するスウェーデン人の女性職人ジェシカさん

オーダーメードの指輪を「Blue Dove Jewelry studio」で製作するスウェーデン人の女性職人ジェシカさん

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 吉祥寺の五日市街道沿いでオーダーメードのジュエリーを女性職人が製作・販売するアトリエ「Blue Dove Jewelry studio(ブルーダブジュエリースタジオ)」(武蔵野市吉祥寺本町4、TEL 0422-27-5293)に9月、スウェーデンのジュエリー職人(Goldsmith=ゴールドスミス)、Jassica Nylund(ジェシカ ニールンド)さんが来日した。アトリエを経営するNAO(吉祥寺本町4)が運営するジュエリースクール「DOVE Academy of Jewelry Arts」で学びながら、11月、ショップでの接客を始めた。

ジェシカさんと接客に使う指輪のサンプル

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 ジェシカさんは33歳。ストックホルム出身で、IT企業に5年勤務した後、「ものづくりが好きだった」ことから、「本格的に学びたい」と2019年にジュエリー学校「Konstskolan Stockholm」に飛び込んだ。2年勉強し、2020年から1年ジュエリーの仕事に就いた後、「もっとデザインの幅を広げたい」と滞在費などの助成が受けられるスウェーデンの交換留学制度「Erasmus(エラスムス)」を利用して、「自分のスタイルを見つけるために、日本の伝統彫金技法を学ぶ」と日本への留学を選んだ。

 日本のことは幼い頃に「アニメ」で知った。20歳で東京に初来日してから、5回訪れる中で、「盆踊りに感動した」というジェシカさん。沖縄、福岡、京都、奈良、北海道などを巡り、「人が親切で、文化がある日本にますます興味を持った」という。

 留学先に選んだ同アトリエのことはフェイスブックを通じて探し当て、自らアプローチした。社長で同スクールの学長を務め、自らも刀「鐔(つば)」などの彫金技法を取り入れ製作する「コンテンポラリージュエリーアーティスト」の山田直広さんは、知人でサンフランシスコのアカデミー「REVERE Academy of Jewelry Arts」 学長だったリビアさんからの情報もあり、「本場欧州のジュエリー文化を日本に紹介するという夢が、ジェシカさんとの出会いで実現に一歩近づく」と受け入れを決めた。

 当初、来日は2021年1月の予定だったが、コロナ禍の水際対策で日本への入国が制限された影響を受け延期に。その後もジュエリーの仕事を続けながら、来日の機会を待った。ビザの申請を行った山田さんは「移民局が担当だったが、特殊なケースで前例がないため苦労して提出した」書類を、再度提出し直し、1年9カ月ぶりの来日へこぎ着けた。

 日本の住まいはアトリエ近くの武蔵野市内で、アメリカ人がオーナーの物件を自分で探した。「吉祥寺は井の頭公園があるところが気に入っている」という。

 ジェシカさんが学ぶのは伝統彫金技法で、主に薬液で煮込んで着色する「煮色(にいろ)」、螺鈿(らでん)のように素材を嵌(は)め込む「象嵌(ぞうがん)」、模様を鏨(たがね)で入れる「彫り」、金づちでたたいて立体的な形を作り出す「打ち出し」となる。

 他にも山田さんは「自分が作りたいデザインのジュエリーを緻密に作る」ため、彫金に使う工具を自分で作ることも教える。金属を加工する鏨(たがね)を研いで整形することや、鍛冶屋が作った小物ペンチ「やっとこ」の先端を研ぎ、焼入れを行うことなどで、ジェシカさんは「指は荒れるが、これもアーティストには必要なこととして取り組んでいる」とほほ笑む。

 「リラックスできる雰囲気」のアトリエでは、デザイン、金属加工、鋳造、石留め、彫刻など、ジュエリーのクリエーティブプロセスを最初から最後までたどることができる。ジェシカさんは「将来、自分がワークショップを運営するために有益」と話す。

 「学んだ日本の彫金技法を自らが選んでアートに取り入れることで、自分のユニークな点をお客さまに発見してもらえるアーティストを目指したい。世界中の人々に日本のものづくりの美しさを知ってほしい」と目を輝かせるジェシカさん。「母国で他のジュエリーアーティストに、日本の金細工の技術を教えることができるようになるかも」とも。

 「ジェシカさんとは1年契約だが、日本滞在は長くて2年なので、2023年9月までの1年延長を考えている」と山田さん。「日本で海外の女性ジュエリー職人が接客までするのは初めてかもしれず、画期的。ジェシカさんはアーティストのセンスも抜群だが、スウェーデン人の中でも、深いところの話しに共感するなど、感覚が日本人に近い。女性ならではのコミュニケーション能力を生かして、現地での女性の活躍やジュエリー文化などを伝える架け橋になってくれたら」と期待を寄せる。

 「今後はスキルの高いジュエリーアーティストのデザイン、制作、接客を欧米基準のクオリティーで提供し、お客さまの声を取り入れながらリフォームにも利用いたたくことで、ジュエリー文化を日本に広めたい」と意気込む。

 営業時間は10時~19時。火曜・水曜定休。

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