吉祥寺の工房で捺染(なっせん)の技法を用いて手染めした手拭いの製作を続けてきた「ともぞう本舗」(武蔵野市吉祥寺本町2)が7月、中道通りから入った脇で2014年7月から路上販売を始めて3年が過ぎた。
同店は手拭いのデザイン作家で店主の小松朋恵さんが2009年に始めたもので、日本の文様や家紋、干支(えと)、植物などを使ったオリジナル手拭いを作り、店舗を構えず屋外に出店する形で販売している。
同所は工房のある中町とは別に版の保管と染めの作業に使うために倉庫として借りた一室が2階にある昔ながらの共同アパート「ハウス秋山」の駐輪場で土曜のみ出店している。
販売する手拭いは1,250円からで15種類ほど。一点一点柄や色が違う。小松さんがひとりでデザインを起こして型を作り、元のりに染料を混ぜた色のりを作って一枚一枚手染めするからで、「多色だと一つのデザインで数枚の型を作って染めるため最大4枚しかできない。染めの工程である色を固着させるための『蒸し』やのりを落とすための『洗い』から乾燥、端を切りっぱなしにしないではみ出た糸を抜いて整える処理、アイロン掛けまで全て自分が行って完成させるので1週間に1種類6枚で10種類60枚作るのが限界」だという。
柄は40種類を超え、直線、曲線、丸、四角などが規則正しい図柄を作る日本古来の「割付文様」から、古典柄の縁起のいい文様やおめでたい文様、歌舞伎文様などの他に一つだけ孫悟空が乗っている雲が描かれた「雲」手拭い、一つだけソフトクリームが混ざって描かれている「巻貝」手拭いなどの「ひとつだけ違うシリーズ」や、あいうえお順に文字が並ぶが「ま」と「け」がないので「負けない」手拭い、「七宝つなぎ」の点が猫の顔になっている「猫七宝つなぎ」手拭いなど「よく見ないと分からないシリーズ」がある。
手拭いの染めは水に染料を混ぜて染める注染(ちゅうせん)が主流。数色使うと色と色が混ざってにじんだようになるのが特徴だが、捺染だと江戸小紋などの細かい柄が表現でき、にじまずにグラデーションを掛けることができるという。「染め上がった手拭いを見て他の店にはない珍しい色味だと好んで買ってくださる方がいる。最近、手拭いを売るのが楽しくなってきた。お客さまと直接ふれ合える売り方で続けていけたら」と店を構えない販売方法に意欲を見せる。
販売時間は13時~17時。他に屋外での販売はハーモニカ横丁の朝市で毎月第3日曜7時~9時30分、井の頭公園のアートマーケッツで日曜11時~16時。いずれも雨天中止。ネット販売も行う。