吉祥寺駅北口駅前広場で5月5日、アジア象「はな子」の銅像完成を披露する除幕式が行われた。大きさは全長約2.5メートル、高さ約1.5メート。設置のため募金額は約1,800万円。
除幕式の様子。完成した「はな子」像と銅像原型制作者の笛田さん
1949(昭和24)年、推定2歳でタイ王国から来日し、5年後に井の頭自然文化園に来た「はな子」は2016年、国内最高齢の69歳で死ぬまで街のシンボルとして愛されてきた。
式典にはタイから象を寄贈した故ソムアン・サラサスさんの遺族も登壇し、「父が贈った『はな子』はタイと日本の友好の象徴。一人のタイ人が託した以上に、元気と笑顔を与える役割を果たしたと思う」と話した。
元気そうに遊んでいた50代の「はな子」をイメージしたという原型制作者の笛田亜希さんは「除幕式で初めて完成した姿を見るまでドキドキした。右前足を上げる姿は、かつて常連が園に来るとよく見せたしぐさ。みんなのものになる銅像なので、あいさつをする楽しそうな姿にしたいと思った」と話す。
梶原製作所(富山県高岡市)に足を運び、完成形と同サイズの原型を水粘土で作ったという。「これほど大きい物を作れる場所は市内でもここ以外はなかなかない。最近は発泡スチロールで原型を作ることも多い中、より精密で美しい仕上がりになる粘土での原型作りという、こだわった発注にも応えてくださった。小さいパーツに分けて鋳物を組み立てる際も、継ぎ目が極力見えないようにするなど、職人の方々が本当に注力してくださった」と笛田さん。
「『はな子』が育った文化園にある、北村西望の「晩鐘」像と同じような色味にできればと着色のやりとりも繰り返した。職人から教わることも多く、いつもは一人で制作に向き合うことが多いので、みんなで作り上げる過程は楽しかった」とも。
「高岡の職人ともまたぜひ一緒に作業ができたら。夢はいつか『はな子』が遊んでいた文化園に実物大の像が造れたら。吉祥寺に像ができたことで喪失感が和らげばうれしいし、この先も、かつてこの街に象がいたことを、たくさんの人に知ってもらえたら」と笛田さん。