耳の聞こえないスタッフが接客を担当する「サイレント・カフェ」(武蔵野市吉祥寺本町1)が吉祥寺に移転して2カ月が過ぎた。
同店は、聴覚障害者と健聴者の間のバリアフリーを促進する目的で、三鷹市公会堂別館に2011年7月開業。当初からユニークな社会的起業として話題になり、北海道や京都、神戸など全国から来店者が相次いだが、同年12月には公会堂別館改築工事のため一時閉店。「住みたい街ナンバーワンであり商業圏でもある吉祥寺に出店したい」(同店代表の渡辺由貴さん)と移転先を探していたところ、吉祥寺のカフェ・雑貨複合店舗「グランキオスク」内での開店が決まり、2月5日に再オープンにこぎ着けた。
席数はテーブル席とカウンター席を合わせて15席。利用客が増えると、カウンターをスタンディング形式で使う。スタッフは聴覚障害を持つアルバイト(3人)とボランティア(4人)に、健聴者のボランティア(1人)と渡辺さんを加えた9人体制。ローテンションを組んで勤務に当たっている。
利用客とのコミュニケーションは、イラストの描かれたマグネット・カードや筆談、手話を使う。主要商品のバナナミルクは、視覚的なオーダーシートとマグネット・カードを使って、135種類がカスタマイズできる仕組みになっている。
メニューは、バナナミルク(350円~420円)、甘いクレープ(400円)、軽食クレープ(650円)、ランチプレート(850円)。クレープの提供は4月中旬までで、その後はアイスクリームになる予定。
「聴覚障害を持つアルバイトからは『仕事が楽しい』『私たちに会いに来てくれるお客さんがいることがうれしい』『サイレント・カフェに来て変わった』という感想が寄せられている。お客さんからも『障害を持っているのに頑張って働いている姿を見て勇気づけられた』『聴覚障害を持つ子どもの親として希望を感じる事業。ぜひ成功してほしい』という声を頂いている」と渡辺さん。
「飲食業の経験がないスタッフばかりなので、現在は毎週土曜・日曜の午後しか営業していない。サイレント・カフェを通じて、吉祥寺の街全体に聴覚障害者や手話に対する理解を広め、聴覚障害者の雇用を考える企業や店舗が生まれ、『手話も通じる街・吉祥寺』になればうれしい」とも。
営業時間は土曜・日曜の正午~17時。