吉祥寺の東急裏・西三条通り沿いにボードゲームを専門に販売する「すごろくや吉祥寺店」(武蔵野市吉祥寺本町2、TEL 0422-27-2570)がオープンして、4月2日で4カ月を迎える。経営は「すごろくや」(中野区東中野)。神保町にも店舗を構える。
ゲームで最初の番の人を決めるのに使うオリジナルの「スターターさいころ」
ボードゲーム販売店を拠点にオリジナルゲームの企画・制作や、海外製ゲームの遊び方などを日本語に翻訳して販売する「ローカライズ」など行う同店。以前は高円寺で営業していたが、商品数の増加に伴い店舗面積を拡大できる移転先を探し、今の場所に出合ったという。
社長の丸田康司さんはテレビゲーム開発者養成学校「HUMANクリエイティブスクール」卒業後、「MOTHER2」「風来のシレン2」「ホームランド」などの開発に関わっていたが、15年目の人員整理をきっかけに次のライフワークを考え、2006(平成18)年に独立して「すごろくや」を創業。事業にボードゲームを選んだのは、「2000年代から主に音と映像の刺激を楽しむゲームが多くなり、自ら考えて解決するゲーム本来の要素が軽んじられる傾向の中、ドイツ発祥の近代ボードゲームの魅力を社会に伝えたかったから」と話す。
店名の「すごろくや」は、ゲームマニアではなく、一般の人にもボードゲームの店だと分かり、気軽に「さん」付けで呼んでもらえる親しみのある名前を、と数週間考え続けた結果、名付けたという。チーズに見立てたサイコロをネズミがかじっているロゴマークは、丸田さんがテレビゲーム「ホームランド」を一緒に作ったイラストレーター有澤好洋さんが制作した。
丸田さんは「ボードゲームの本質的な特徴は参加者が『小さな社会』を運営することにある」と話す。「他者の利は自分の利と対等で、ルールは公平な場を構成するための制度。全員が全員のために場を成り立たせようと無意識に頭を使うが、幼い子供にはそれが難しく、ズルをして場を壊してしまうこともある。ボードゲームの魅力は互いが互いの良さを引き出そうとするところ」とも。
博物館学修士号の資格を持ち、チェスが趣味という店舗スタッフの平井茜さんは「新規のお客さまだけでなく、オープンから定期的に足を運んでくれる常連も増えた」と振り返る。「これからは家庭での生活の一部にボードゲームを楽しむ時間を取り入れてもらえるよう吉祥寺での催しや店内でのイベントを通じて魅力を伝えたい」と意気込みを見せる。
店舗面積は104平方メートル。窓側にはスタッフから説明を受けながらゲームを体験する紹介用テーブル1卓と椅子4脚を、約400種類そろえるサンプルコーナーには丸テーブル2卓と椅子4脚を備える。
店内には中華料理名を作るように「タン」「メン」「チャー」などの具材カードを素早く割り込みながら中央のトレイに重ねる「音速飯店」(1,320円)、3×3のマス盤面に自色の駒で縦、横、斜めの1列を作るために駒を動かすなどする対戦ゲーム「ゴブレットゴブラーズ」(3,080円)、選んだ曲を実際に流し、場に並んだレコージャケット風のイラストから最も曲のイメージに合うものを投票で決める「ディスクカバー」(3,740円)など約600品目をそろえる。
「ボードゲームは盤の上で遊ぶもの」という定義にこだわらず、店の基準で集めた。棚への陳列は「ゲームの魅力ごと」で、大人が30分から1時間くらいでじっくり遊べる「オトナちょうどいい」のほか、「大人で気軽に」「大人でじっくり」「2人で楽しい」「子どももじっくり」「子どもも手軽に」などに分けて並べる。1人用もある。ボードゲームに関する書籍や最初の番の人を決めるのに使うオリジナルの「スターターさいころ」(275円)などの独自ツールも販売する。
「介護施設、学童保育、幼稚園、知的障害者施設での利用や入学シーズンなので、プレゼントに買い求める人もいる。ヒアリングしてから最適なゲームを薦めている」と平井さん。「ボードゲームは少しずつ認知されてきたが、まだまだ知らない人や遊んだことがない人が多い。自分とは異なる考え方を持つ人たちとリアルに会って会話することで、リアルな経験を共有し、相手を思いやるきっかけになればうれしい」と話す。
「吉祥寺には地域住民に長く愛されている店が多い。地域を愛し愛される店として、楽しんでもらえる店舗にしていきたい」と来店を呼びかける。
営業時間は12時~20時(土曜・日曜・祝日は11時~)。月曜・火曜定休(祝日は営業)