
「クリエイティブ・ショートムービー」を企画・制作するプロジェクトチーム「武蔵野映画研究会」が現在、吉祥寺の喫茶店を舞台にした短編映画「思い立ったが吉祥寺」の製作を進めている。
2024年夏、同会は「大好きな吉祥寺で映画を作りたい」と「吉祥寺まち映画プロジェクト」を立ち上げた。企画のキーワードを「地域活性化」、「スモールビジネス応援」、「第三者承継」と決め、第1弾の映画として「吉祥寺の街で事業承継にチャレンジする若者の姿を明るく伝えたい」との構想を「思い立ったが吉祥寺」にまとめ上げ、3月に撮影を始めた。
初めて映画監督を務める同会のいなだゆかりさんは「いつでもあると思っていた店が、ある日、もう、ない。映画を通して吉祥寺で個人店が失われていく現状と小さな店を承継していく大切さを発信したい。吉祥寺に長く住み、この街で育てられた今こそ、吉祥寺の街に恩返しをしたいという意気込みで製作に臨んだ」と話す。
舞台には「孤独のグルメ」(テレビ東京系テレビドラマ)に登場した、吉祥寺で1975(昭和50)年から営業を続ける「カヤシマ」を選んだ。脚本は店名を「ナカシマ」に変えたフィクションで、同会の諏訪霜月(平田暢子)さんが音楽と共に担当した。プロデュースは同会の山田浩之さん、撮影は刈谷亮介さん。
ストーリーは、大学時代に吉祥寺の老舗喫茶店ナカシマでアルバイトをしていた山田修吾(シュウゴ)(神坂竜久さん)が、就職後に「ナカシマ」閉店の話を聞き、「第三者承継」で店を引き継ぐ決意をするという内容で、上映時間は約30分。
ナカシマのマスター、中島聡には吉祥寺に拠点を置く「劇団め組」社長の与儀英一さんを起用。シュウゴの友達、五十嵐海(カイ)(吉開一生さん)、ヒロインの宮下なのは(中澤実子さん)、聡の娘、中島友理(宮本なつさん)などや街の人々が織り成すヒューマンドラマに仕上げた。
撮影場所は、井の頭恩賜公園、吉祥寺西公園、中道通りなどや武蔵野商工会議所、吉祥寺の多くの店舗が使われ、エキストラには街の人も参加した。
いなださんは「映画作りには思った以上にマンパワーとお金が必要だった。監督自らが美術やADをこなすのも難しかった。ロケ地では撮影時間が限られるのと映画の中で4年の時間が経過するので香盤表の作成にも苦労した」と振り返る。
「一市民として、『まちの文化』を守っていきたい。吉祥寺が好きな人、事業を承継したい人、まちづくりや地域活動に取り組む人などに見てもらえたら」とも。
現在は、最後の編集作業を手がけているという。完成は9月上旬。現在、クラウドファンディングで協力を呼びかけている。リターンには、製作スタッフとの飲み会参加権(5,000円)、「思い立ったが吉祥寺」の台本に映画のシーンの写真を収録したシナリオブックレット(2万円)などを用意する。8月31日まで。