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吉祥寺美術館で「江上茂雄」企画展 2万点以上の風景画を残した画業に迫る

江上茂雄展より 「夏の終わり」 2002年9月 水彩

江上茂雄展より 「夏の終わり」 2002年9月 水彩

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 武蔵野市立吉祥寺美術館(武蔵野市吉祥寺本町1、TEL 0422-22-0385)で5月26日、福岡県・大牟田に暮らした画家・江上茂雄さんを紹介する企画展「江上茂雄:風景日記 diary/dialogue with landscapes」が始まった。

熊本県・荒尾にて制作中の江上茂雄さん 1997年3月頃(撮影:山本直也)

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 江上さんは1912(明治45)年、福岡県山門郡瀬高町(現在の福岡県みやま市)に生まれる。15歳で就職するも、「画家として生きる」という少年時代の決意を貫き、独学でクレヨン・クレパスによる表現を極めていく。定年退職後、大牟田から隣接する熊本県・荒尾に移り住み、1979(昭和54)年からの約30年間は、ほぼ毎日戸外に出かけ、1日1枚水彩風景画を仕上げて帰宅するという生活を送った。2014年、101歳でその生涯を閉じる。

 学芸員の大内曜さんは「2013年に福岡県立美術館ほかで連続開催された個展をきっかけに、自宅に残した2万展以上にも及ぶ風景画など、その膨大な作品と特異な存在への評価の声が高まった」と話す。

 同館は、記録や記憶の在りか、在り方を問う企画展シリーズとして行った、2016年の「カンバセーション_ピース 形を(た)持たない記録:小西紀行+AHA!」、2017年の「コンサベーション_ピース ここから向こうへ(part A 青野文昭展/part B はな子のいる風景)」に続く第3弾として同展を位置付ける。

 大内さんは「都内で初めて江上さんを紹介する本展も、風景画に焦点を当てた。見る人にとっては知らない一人の画家が、知らない場所で毎日描き続けた風景だが、膨大な作品を前にすると、制作中の江上さんを見ている人、その風景の中を通過していく人など、作品には直接描かれていない時間や記憶が想起されるように感じられた」と話す。

 「身近な風景と対話し続けた江上さんの足跡をたどるものでありながら、土地の人が『路傍の画家』である江上さんを目撃した場の記録でもあり、さらには絵の前に立つ誰かの共感を呼び起さずにはいられない景色なのでは」とも。

 6月2日は編集者・都築響一さん、23日はAHA!の松本篤さんとデザイナー・尾中俊介さん、30日は作家・保坂和志さんを招いた関連トークイベントを、音楽室で予定する。

 13日と17日は講師の杉浦幸子さんが、美術館で乳児と一緒に鑑賞を楽しむ方法をレクチャーする「赤ちゃんといっしょに美術館!」を行う予定。対象は3~12カ月の乳児とその保護者で各日5組。

 開館時間は10時~19時30分。入館料は、大人=300円、中高生=100円ほか。7月8日まで(5月30日、6月27日は休館)。トークイベントは14時~。参加無料。定員は各80人(要事前申し込み)。

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